Price is what you pay. Value is what you get.

ビジネス書・相場関係書に関するファンドマネージャーの備忘的メモ

最強のデータ分析組織 河本薫【☆☆】

普通の日本の会社がどのようにデータ分析をものにしたのか

ビッグデータ機械学習への取り組み姿勢を考えさせられる本

流行りに乗って、言葉だけ踊っても何も残らない

f:id:ryoryo10:20190611232118j:plain

 

 

先ずは、世間一般的な考えに対する戒め的な文言から

ビッグデータという言葉の影響で、大量のデータがあり、それを〝料理〟できる分析者さえいれば、「素晴らしい成果が出るに違いない」と勘違いしている人が少なくありません。…実際、統計解析や機械学習を用いて結果を出せば、しばらくは「すごい発見やすごい予測ができそうだ」と現場は盛り上がるでしょう。にもかかわらず、いつまで経っても意思決定に役立ちそうな道筋が見えてこなければ、次第に「役立たない」という烙印を押されて、最後には見向きもされなくなります。…役立たないことには誰も関心を示しません。


本全体に通して言えることだが、筆者は分析手法自体は勉強すればモノにできる

ただ、本当に大事なのはいかに生きた分析にして、現場に使わせるか

それは一朝一夕には行かず、現場との密なコミュニケーションが欠かせない

次に、この本の最大のキーワードである「見つける」「解く」「使わせる」について

一般企業で働くデータ分析者は単なるデータ分析だけで終わらず、業務改革につなげるため、「見つける」「解く」「使わせる」の三つの力を持たなければなりません。…三つの力のうち「解く」については、数学的な分析手法やツールは既に用意されており、書籍やセミナーで学ぶこともできます。しかし、分析手法を習得できれば、問題が解けるわけではありません。「特徴量を考える」「分析結果を解釈する」「現場の仮説力と融合する」といったこともできなければなりません。

最先端の分析手法を試すことに主眼を置いてしまうと、役立つことが置き去りになりがちです。「解く」ことにしか関心を持たず、「見つける」や「使わせる」は他人事のように思ってしまうことを私は最も恐れています。


分析を生きたものにするためには「見つける」「使わせる」が重要

一方、分析者は往々にして「解く」に力点を置きがち

そうすると、結局、分析者とユーザーの間で意思の疎通が上手く行かず、不幸な結果を招きやすいように思う

うちの会社でも同様の状況に陥っているような気がする

もう一つのキーワードである(と思う)「スポンサーシップ制度」について

挑戦する意義が曖昧なまま、分析者の興味だけでデータと向き合い、分析手法を操ることは、仕事に対する姿勢としては不健全だということです。…だからこそ、分析者には自制心が求められます。それでも現実には、不適切な姿勢を自制心だけで回避するのは難しいのです。そこで大阪ガスでは、制度的に回避する仕組みを導入しました。それが「スポンサーシップ制度」です。

スポンサーシップ制度の最大の狙いは、データ分析に対する費用対効果のアセスメントです。そのデータ分析を行うのにどれだけの費用がかかるのかは、分析組織が一番よく分かっています。そのデータ分析がどれだけビジネス効果を生みだすかは事業部門が最もよく分かっています。…分析組織側から費用を提示して、事業部門はその費用を支払うだけの成果を期待できるかを総合的に判断します。これがデータ分析の費用対効果を見極める合理的なプロセスだと、私たちは考えています。


「スポンサーシップ制度」は、取っつきやすい話で、先ずは真似したくなる

この仕組みを取り入れることで、分析を生きたものにできるように思えてくる

でも実際に運営するには相当時間を要するのかもしれない

事業部門が話に乗ってこないといけず、そのためには信頼を得ないといけない

最後に、この本で一番心に残った部分

新しいモノやコトを創りだす仕事は、目標もプロセスも所与ではなく、それらを自ら考えだすことが仕事なので、プロセスや結果を管理するだけではうまく機能しないと思います。芸術家をマネジメントするのに、制作時間や作品数を管理しても機能しないのと同じです。創造的な仕事は、「仕事」のマネジメントよりも「人」のマネジメントのほうが効果的だと私は考えています。


『「人」のマネジメント』っていい言葉ですね

どうしてもタスク管理、スケジュール管理をしがちだが、それよりも人のモチベーションを管理せよとのこと

目からウロコでした

スケジュール管理ではなく、モチベーション管理に重点を置くというのはごもっともです

 

【まとめ】
世の中には、ピカピカのIT企業によるビッグデータ利用術のような本は多いが、やはり少し遠く感じる

「大ガスのデータ分析」と聞くと親近感が湧くし、自社でもできるのではないかと思えてくる

結局、実際に大事なのは、泥臭く駆けずり回って調整していくということ

日本人の得意な「現場主義」「擦り合わせ」が役に立ちそうだと感じ勇気をもらえた
すぐにデータ分析ができるようになる魔法はないが、この本を読むことで、何をどうすれば良いかの道標は掴むことができると思う