野生化するイノベーション【☆☆☆】
「イノベーションを飼いならすことは難しい」ことを『野生化』との言葉で表現
日本はイノベーションを起こすためにどうすれば良いか
イノベーション先進国の米国と比較しながら、その方法を考える
【まとめ】
イノベーション生産国のアメリカとの比較で日本が今後どうすれば良いか説明。
人材の流動化は大事だなと改めて思うとともに、では企業内でいかにイノベーションを育てていくかを考えさせられる内容でした。
日本企業の弱みと強みを考えながら独自の進化ができれば良いのでしょう。
それにしても、頻繁な「報・連・相」はTPOをわきまえて実施した方が良さそうです。
【内容】
筆者は、イノベーションの特質として以下の3点を挙げている。
「習性」とは、イノベーションを起こしやすくする規則性があるということ
「移動」とは、手元で飼い慣らすのは難しいということ
「破壊的な側面」とは、社会を不安定化するかもしれないということ
になる。
「習性」として、以下の記述が興味深い
短いサイクルで報告や連絡、確認などを求められると、人は不確実性の高いものを避けて、リスクの低いものに取り組むようになってしまいます。「上手くいきました」という報告をしたいのです。これでは、新しいチャレンジは段々少なくなってきてしまいます。一見すると新しいチャレンジに見えるけれど、実はそうでもないことばかりになってしまうのです。
つまり、一般に会社で言われている、「報・連・相」の高速回転は、イノベーションを阻害するかもしれないということ。
イノベーションには時間がかかるし、効果が時間差で生じることも多い。
短期的なスパンで報告すると、本質的な開発に進まないということなのだろう。
マネージする人は大変だ
またイノベーションには以下2種類ある
ラディカルなイノベーションは、それが生まれた段階では、ほとんど「使い物にならない」ということです。社会を大きく変革し、大きな経済的価値を生み出す潜在性を持ってはいるのですが、そのままでは粗野すぎて、生産性を上げるどころかむしろ下げてしまいかねない代物なのです。
ラディカルなイノベーションを生み出しただけでは、生産性は上がりません。それに対する累積的なイノベーションを重ねていくことによって、ようやく生産性は向上し、「使える」ものとなっていくのです。
一般的には、ラディカル・イノベーションがイノベーションとして認識されがちだが、プロセス・イノベーションも重要とのこと。
古くは蒸気機関、足元ではAIや自動運転についても、発明された当初は、ほぼ使い物にならず、その後の累積的な改良により使えるものになった。
そして、やはり日本はプロセス・イノベーションが得意。
日本人の集団的な働き方は、必ずしも悪いものではありません。むしろ累積的なイノベーションにはプラスでしょう。しかし一方で、ラディカルで破壊的な側面の強いイノベーションを社内に導入することに対する抵抗はどうしても強くなってしまいます。
二つ目の「飼いならせない」話。
新しいアイディアと信念があったとしても、その根拠が乏しかったり、実績がなかったりすると、大規模な組織で何段階も階層を踏んだ意思決定を経ていくうちに、アニマル・スピリッツはどんどん削がれてしまうのです。ここが、イノベーションを「飼いならす」のが難しい理由です。
人材の流動性とイノベーションには関係があるとの話につながる。
そして、この本で最も印象的だった「富士フイルムとコダック」の話。
一般には、富士フイルムはフイルム事業の技術をヘルスケアに生かして成功し、コダックは倒産したというのが評価。
しかし、イノベーションの成果という意味では必ずしもそうはならない。
詳しくは、以下記事が参考になる。
足元、ちょっとニュースになっているスピンオフとスピンアウトの話も。
スピンオフとは、親企業から資本の提供を受けて独立するもの。
スピンアウトとは、親企業からの資本の提供を受けずに独立するもの。
より野性味溢れるのはスピンアウト。
ただ、だからと言ってスピンアウトを促進すれば良いというわけでもない。
日本のようにスピンアウトを促進する制度が整備されていない社会では、研究者は同じ領域で長期間競争しやすくなるため、累積的なイノベーションは多くなりますが、サブマーケットの開拓は進みません。反対に、流動性が高い社会においては、サブマーケットの開拓は進みますが、累積的なイノベーションが十分に成熟しない傾向があります。
必ずしもアメリカの真似をすれば良いわけではない。
人材の流動化を行うためには、それ相応の環境整備が必要とのこと。
そのあたりについては、以下記事が参考になる。
そして、最後に社会を不安定化する話。
既存の業界に影響を与えるためにこの辺りは想像がつく
例として東洋紡の話が掲載されている。
その辺りは、こちらの記事が参考になる。