マーケットの魔術師【☆☆】
様々なスタイルで活躍しているトレーダー達の言葉が集められている本。
インタビュー形式で進められており、冗長に感じる人もいるかもしれないが、ハッとする言葉も織り込まれており、読む度に心にフックする言葉が変わる名著。
まずはリスク管理について、とにかく多くのトレーダーが言っていることは、損切りのこと。
多分最も重要なことは、利が乗っているポジションはできるだけそのままにしておいて、やられているポジションは早く切るということじゃないかな
この仕事を二〇年近くやっていて習得したことがあるとすれば、それは不測の事態や不可能が次々と起こるということだ。
私にとってトレードとは、自分に多少有利に歪んだサイコロの目に賭けるようなものだ。
分かっていてもできない事だからこそ、誰もが重要視しているんだろう。
確率にかけているという考え方は、本当に重要だなと改めて思う。
特に以下の言葉は秀逸。
「なぜ多くのトレーダーは損をするのか」の回答として、
ミスを認めるよりも、損をする方を選ぶからだ。損したポジションを持っているトレーダーの極め付きの正当化は何だと思う。「トントンになったら手仕舞うよ」だ。
はい。まさによくやってしまいます。
「ミスをすることを恐れるな、損をすることを恐れろ」
というのは至極の言葉です。
次にテクニカル分析についても、様々なトレーダーが話している。
全く参考にしていないとのコメントも一部であるが、以下の言葉が気に入っている。
僕にとって、テクニカル分析は温度計のようなものなんだ。チャートに全然注意を払おうとしないようなファンダメンタル信奉者は、患者の体温を計ろうとしない医者と同じだね。
テクニカル分析なんて信用できないという人がいるけれど、彼らは気に入ったものしか見ないからね。問題は常に単独でうまくいくテクニカル分析なんてありはしないということだよ。
テクニカル分析だけで儲かるというのは難しいように思う。
一方、道具として使う分には有用。
要は使い方次第、ちゃんと距離を置いて使うべきということでしょうか。
「確率にかけている」との考え方と合わせてみると、その使い方も自ずと見えてくるように思う。
その他、長い間市場に対峙したからこそ見えてくる以下のような見方も面白い。
相場は操られていると信じている人がいるけど、それはバカげている。僕は多くの偉大なトレーダーを知っているけれど、誰も相場を動かせる者なんていないと確信しているよ。遅かれ早かれ相場は行きたいところへ行ってしまうんだ。
よく「市場を動かせるトレーダー(投資家)」と言った肩書きを持つ人がいるけど、実際には強引に動かしているというよりは、誰もがついていける次のテーマを探すことが上手い人という意味なんだろう。
無理矢理動かしても結局ポジションを戻す過程でやられてしまう。
最後に相場に立つ上で心に刻み込んでおきたいこと。
市場を尊敬すること。何でも鵜呑みにしないこと。家へ帰ってからも勉強すること。毎日反省すること。自分の行動のどこが正しくて、どこが間違っていたか分析すること。これは宿題の一部で、それに加えて予定をたてる。明日どうなってほしいか。逆にいったらどうするか。何も起こらなかったらどうなるか。すべての場合について考慮する。対応するのではなく、予想し、予定をたてるのだ。
「対応するのではなく」「予想・予定を立てる」というのは、目から鱗。
「確率にかけている」だけに、事前に様々なシナリオを考えること。
それでも予想通りには行かないし、そういう時は確りと損切りをすること。
予想外のことに対して、「うまく対応できた」というのは、自己満足であるかもしれない。
いつも自分の胸に手を当てて、自省を忘れずにということでしょうか。
【まとめ】
駆け出しの頃に読んだ時は、正直あんまり引っ掛からない本でした。
今回、ブログに載せようと思って改めて読み直してみて良さがジンワリと広がりました。
相場の本は、その時の心境や自分のトレード哲学次第で評価がガラリと変わりやすいもの。
多分、昔と今では相場に対する考え方も変わってきたのかな。
「話が冗長」と思う方が多いかもしれません。
でも、とにかく読みきって、色々と自省してみるとジンワリと良さが感じられる本かなと思います。
2001年初版発行ということで、すでに古典の域に達しているが、今読んでも色褪せない。