血を繋げる。【☆☆】
常勝チームを作り上げた鹿島アントラーズの強化部長による組織論
「血」という言葉を使い組織文化の大事さを説く
ジーコやセレーゾなどこれまで関係した人物を挙げながら独自の理論を展開する
【まとめ】
組織論としてとても面白い本だなと思いました。
自らの経験に基づき考えられたものだと思いますが、結論は組織論として通用する内容に思います。
ビジョナリー・カンパニーでも企業のカルト的なカルチャーは重要との話があったやに記憶していますが、それに繋がる話かなと思いました。
事業に成功した社長の自慢話ばかりが書かれている本などよりは、余程言葉が新鮮で気持ちが伝わりました。
やはり、純粋に勝負に拘って何十年も過ごしていると違うなと感じます。
サッカーに興味ない方もビジネス書として読んでみるのはいかがでしょうか。
【内容】
前書きが素晴らしい
チームは「生きもの」だと言われる。日々、変化する。成長もするし、老化もする。スポーツのチームに限らず、組織はすべて、そういうものだろう。
生きものだから「血」がかよっている。その「血の色」「血の質」によって、組織の体質に違いが出る。
血の色が組織の流儀を決め、組織を取り巻く雰囲気、空気を決定づける。独自の血を繋ぎ、大事に守っていかないと組織の文化は築けない。
これまで勝負に関わり続けたからこそ出てくる言葉に感じる。
完璧といった状態は決してなく、日々変化し続けるのが組織というものなのだろう。
コントロールしようとしてもできず、まさに組織の意思で勝手に動くもの。
そういう中では、組織の体質が重要でそれをメンテするのが強化部長の仕事ということなのかなと理解。
それでは鹿島の体質(=文化)は何かというと全てはジーコから始まっている。
我々はジーコが授けてくれたスピリットを「献身、誠実、尊重」と表現することにした。言い換えると、「クラブに関わるすべての者が勝利のために結束し、すべてを尽くす」ということだ。
企業論で言えば、いわゆる「バリュー」に当たる概念だろうか。
チームの価値観を示した言葉のように思う。
この価値観が浸透することにより、選手の一人ひとりが自らで行動できるようになる。
やる気のないやつは必要ないと、みんなが思っている。サッカーとしっかり向き合わない選手は疎外感を覚える。鹿島の練習場にはそんな厳しい雰囲気が漂っている。そこで鹿島の血が継承され、鹿島の流儀を身につけた選手が育つ。
「だから鹿島のコーチは楽なんですよ」と秋田は言う。監督やコーチがうるさいことを言わなくても済む。
組織として理想的な状況ですよね。
この状態が作っていければ本当に素晴らしいと思う。
ただ、鹿島もいつも順調であったわけでもなかった。
特に監督の変更によりチームの状態も大きく変わっていく。
セレーゾが選手を縛りすぎて、力を出せなくなった。石井監督が自主性を重んじるとチームは生き返ったが、そのうち自由度が高まりすぎ、再び歯車が狂い始めた。チームマネジメントというのは本当に難しい。
監督それぞれの個性によりチームも変わっていくし、また同じことを続ければ良いと言うわけでもないのだろう。
選手のことについても少し触れている
小笠原満男、内田篤人、柴崎岳らは自分に何ができて、何ができないかを客観視できる。そのうえで、やりたいことを我慢する自己犠牲の精神を備えている。やりたくないことでも、すすんでやる。
勝利のためには「自分」を出さなくてはいけないが、「自分」を抑えなくてはいけないときもある。それぞれの選手が自分の目指すもの、好きなことだけをやっていたのではチームはバラバラになってしまう。それでは勝てない。鹿島にはそこがわかっている選手が多いのだと思う。
プロの厳しい世界の中で、「自己犠牲の精神」と言うのはいかにも日本的。
それでもチームの勝ちにこだわるならば必要になってくるのだろう。
組織の文化をどのように繋いでいくか、以下リンクでも少し触れられている。
内容に興味持たれた方は、まずはこちらから。