ファクトフルネス【☆☆】
人は、本能により事実を悲観的に捉えがち
様々な事例を元に、人々の思い込みを剥がしていく
そして、その原因となる10の本能について、飼い慣らし方を示す本
「世界の平均寿命は現在およそ何歳でしょう?」
答えは50歳でも60歳でもない。
もちろんそれより短いわけではなく、もっと長い。
これらの質問に対して、様々な国の様々な分野で活躍する人々が間違える。
政治家も研究者もジャーナリストも多国籍企業の役員も 。
しかも当てずっぽうよりもさらに正答率は悪くなる。
間違った知識を持った政治家や政策立案者が世界の問題を解決できるはずがない。世界を逆さまにとらえている経営者に、正しい経営判断ができるはずがない。世界のことを何も知らない人たちが、世界のどの問題を心配すべきかに気づけるはずがない。
では、何故みな間違えるのか。
その原因は、人間がもともと持つ「本能」にあると考えている。
そして、原因となる10の本能を抑制して、「ファクトフル」な世界の見方を身につけようと提示している。
例えば「恐怖本能」の項目では、例として原発の話が載せられている。
福島原発事故について
原発の近くに住んでいた人は避難したが、そのうちの約1600人は避難後に亡くなった。死因は放射線被ばくではない。…避難後に亡くなった人の多くは高齢者で、避難の影響で体調が悪化したり、ストレスが積み重なったりして死亡した。人々の命が奪われた原因は被ばくではなく、被ばくを恐れての避難だった。
このときも多くの識者が、被ばくした人のあいだで死亡率が大幅に高まると予測した。しかし、世界保健機関が後に出した調査報告によると、原発の近くに住んでいた人も含め、死亡率が大幅に高まったという証拠は見つからなかった。
人は恐ろしいものには自然と目が言ってしまう。
恐怖に打ち勝ち、リスクを正しく見積もることが重要と言っている。
また、「パターン化本能」でも興味深い
避妊を禁ずる宗教は多い。だから信仰心の厚い女性は子供の数が多いと思い込んでしまうのは、わからなくはない。だが、宗教と女性ひとりあたりの子供の数には、それほど関連がない。むしろ、子供の数と強く関連するのは所得だ。
国や宗教で人は色々なことをカテゴライズしやすいと筆者は言う。
しかし実際には、所得との関連が大きく、国や宗教が違っても所得が同程度の人の行動様式は驚くほど似通っていると説く。
このほか、「分断本能」や「ネガティブ本能」など様々な本能について実例を交えて説明している。
人は必要以上に世の中を悪く見てはしないかと問いている。
ただ、そんな筆者も温暖化については、人々の悲観論は事実に近いようでちょっと考えさせられる。
【まとめ】
この本のネタは、大分世間でも周知の事実となってきていて、今となっては、人によってはそれほどビックリする内容ではないかもしれません。
でも、その裏側にある人間の本能を気づかせてくれることは確か。
相場を張っている人は、本当の事実はどうなのかをいつも気にしていると思うので、このあたりの本能の飼い慣らしには、結構意識している人も多いかも。
そう言う意味では、相場に対峙する基本姿勢として、この本の内容はとても大事かなと思ったりします。
自分をチェックする上で、読んで損はない本だと思いました。