「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明【☆】
題名の通り、「巨大企業が新興企業の前に力を失う理由を説明した企業経営の理論」であるイノベーターのジレンマについて、経済学的な見地から説明した本。
豊富な事例をもとに説明しており分かりやすい。
特に、後半のHDDの市場を実例にした分析は、現代の経済学というものがどういうものかわかる。
まずはイノベーターのジレンマについて
既存企業にとってイノベーションがしやすいのは、新旧製品が共喰いしないとき、経済学用語でいうと 新旧製品間の「代替性が低い」 ケースである。ところが、両製品のキャラ(キャラクター・特性) がかぶると、同じ消費者の奪い合いになるので共喰いが発生し、代替性は高い。要するに代替性とは 商品間の競合する度合い のことである。
新参企業にとってはどうだろうか。…肝心なのは、彼らには既存製品がないという点だ。旧製品をもたないので、共喰いが発生する余地がない。…かくして、新参企業はイノベーションに積極的になりやすい、というかそれ以外にやることもない。
筆者が例として示すコーンフレークの話はわかりやすい。
「共喰い(カニバリズム)」がどのように生じるのか、「置換効果」により新参企業が優位になりやすい状況がスッと入ってくる。
次に、「先制攻撃」「抜け駆け作戦」について
既存企業グーグルはライバルの参入によって失う物が大きい分、必死になって「唯一無二のトップ」の地位を防衛しようとする。
市場の独占的な企業としてグーグルを例に挙げている。
独占度が高いほど、新参企業の出現による利益の逸失が大きいため、なんとか新技術を取り込もうとする。
それが、フェイスブックによるインスタであり、グーグルによるディープマインドとなる。
さらに既存企業の行動を決めるのが、「研究開発能力」となる
ただこの研究開発能力については、「既存企業の方が新参企業よりも優れている」とのこと。
結局、既存企業にイノベーションが遅れがちなのは、意欲の問題?
さらに、投資家の存在が既存企業のイノベーションを困難にしている。
投資先の既存企業が、製品間の共喰いを是認してわざわざ旧事業の死期を早めたりすれば、「旧事業用に投資してきた株主資本はムダになってしまう」
投資家にとっては、イノベーションに成功して生き延びるのは、別にどの会社でも構わない。既存企業が旧技術とともに滅亡するというなら、私たちの子供や老後のためのカネは「新世代の有望株」に振り向けたらいい。それだけだ。
投資家は、企業とセイムボートに乗っていると思いきや、そうでもないようです。
投資家はいつでもボートを乗り換えられる。
イノベーションのような「面倒なことはしてくれるな」ということになるのでしょう。
そして最後は、個別企業の話ではなく、産業全体や国としての視野で話が進む。
結論は、、、
経済学的ハッピーエンドでした。