賃金上昇が抑制されるメカニズム
日銀のワーキングペーパーから
賃金の議論で有名な玄田先生との共著による賃金上昇に関する研究
ズバリ、労働市場は「ルイスの転換点」を迎えつつあり、賃金が急速に上昇する局面に入るかもしれないというもの
「ルイスの転換点」というと、中国経済の文脈での話が多いが、ここでは、、、
続いてきた労働供給の拡大が収斂することで労働市場がルイスの転換点に到達し、結果的に実質賃金が大きく上昇する可能性
について論じたもの。
具体的には、パネル調査をもとに、女性と高齢者について労働需給に対して賃金が急速に上昇する局面に入りつつあるとの分析になる。
特に女性については、その局面は目前とのこと。
ただ、賃金上昇はボーナス(一時金)の上昇により実現する可能性が高そう。
その場合、なかなか消費への盛り上がりにはつながりにくいかもしれない。
さらに、物価上昇へ繋がるかについて分析を行っている。
内容は、業態毎にコストプッシュ的な物価上昇が起きやすいか、ユニット・レーバー・コストを使って説明。
結果は、、、
製造業、建設業、飲食宿泊業では、人 件費の上昇を相殺するかたちで、新規投資などによる労働生産性の向上が進んだ結果、単位労働費用(ユニット・レーバー・コスト)の上昇や物価への転嫁は回避されてきた。
一方、卸売小売業、運輸・郵便業、サービス業では、人件費の上昇に労働生産性の向上が伴わず、結果的に単位労働費用は上昇し、値上げ圧力を強めている。
とのこと。
結局、サービス業がポイントになるということだろう。
なお、最後には外国人労働者の採用やAIによる技術革新についても言及している。
最初は、「賃金上昇は間近」と威勢が良かったものの、最終的には大分トーンが弱まっている印象だ。